プラントエンジニアは激務?きつい?プラントエンジニアが実態を解説

naruhashi
この記事を読んで分かること
  • プラントエンジニアが激務と思われる理由
  • 設計職と施工管理での激務度合い
  • 激務であることのメリット、デメリット
  • 激務に悩んだ時の対処法
  • 激務になった場合の体調管理方法

プラントエンジニア産業プラントや機械の設計、建設、運営、改善などに関わる専門家です。
化学工場、発電所、石油精製施設などのプラントを設計し、安全性や効率性を確保する役割を担っています。そのためプラントエンジニアの仕事は非常に専門的であり、様々な技術や知識を要求されます。

そのためかGoogle検索などで「プラントエンジニア」と検索するとサジェストに「激務」が出てきます。なぜ激務と思われているのか思い当たる節を一つずつ解説していきます。

プラントエンジニアだけではく、どの業界でも「激務」と言われるような仕事や時期はあると思います。

プラントエンジニアが激務と思われる理由

納期厳守

顧客へのプラント引き渡しが遅れることは原則許されません。引き渡しが遅れる場合、1日単位で何百万円もの損失が発生する場合があります。契約書にもLiquidated Damages(通称リキダメ)として遅延条項がほぼ盛り込まれています。
他業界より納期遅れの影響が大きくなることが多く、残業時間が増える要因になっています。

見積もり段階で各作業にかかる日数を算出し、顧客へ納期を提示する際にはトラブル発生を見越した日数に余裕を上乗せするのですが、それでも予想外のトラブルなどで納期はギリギリになってきます。
「AのためにBを何日までに終わらせないといけない」「Cが遅れたからDも遅れるがなんとか挽回させないと」といった状況がよく続くため、時間に追われる働き方が激務という印象になっているのでしょう。

膨大な業務量

プラントエンジニアの仕事は複雑で大規模なプロジェクトに関わることが多いです。
企業規模や案件規模によっては担当業務を専門家していますが、設計や建設は多くのプロセスや設備、制御システムなどの統合を必要とし、数多くの詳細な要素を考慮する必要があります。
そのためプラントエンジニアは常に膨大な業務量に直面し、多くのタスクを同時にこなさなければなりません。

また社内外の関係者と業務調整をしながら仕事を進める必要があるため、打ち合わせが多くなったり、どこかが遅れた分の埋め合わせを他の仕事でカバーしたりといった調整業務も多く発生します。

設計資料や検査資料を顧客・官公庁へ提出する必要があるため、書類作成業務も非常に多いです。資料をまとめること自体も大変なうえ、デジタル化が進んだ時代ですが紙での提出を求められるため紙ファイルを作るのもまた大変です。

これらが最初に述べた納期厳守と相まって激務となる要因の1つです。

ミスが許されずチェック作業が多い

設計や施工でミスしてプラント事故が起きると人命に関わる場合があります。また運転停止中の収益損失は1日あたり数百万円になることも珍しくありません。

そのため設計段階ではDR(Design Review)など、自分以外の人から見て設計に問題ないかを厳しくチェックされます。施工段階でも同様に品質管理担当者が施工前チェック、施工後チェックを行い、設計通りに施工されていることを確認します。

これらチェック時に問題があると再度業務をやり直し、改めてチェックを受けるということが合格するまで続けられます。

そもそもの設計思想や施工方法に問題がある、チェック作業が厳しいといった場合、仕事がいつまで経っても終わらないためいつの間にか激務状態となっていきます。

精神的プレッシャー

プラントエンジニアは施設の安全性や効率性に責任を持ちます。プラントの正常な運営やトラブル防止は人々の安全と環境への貢献に直結しています。

そのため高い精度や品質が求められ、ミスや問題が起きないように細心の注意を払い業務を行い続ける必要があります。これまで述べたような納期厳守、膨大な業務量、ミスが許されないなど様々な要因が重なり合い常に高いストレスやプレッシャーに晒される環境にあります。

このストレスやプレッシャーがつらい場合に激務と感じることがあるようです。

設計職と施工管理での激務度合い

設計職と施工管理の両方はプラントエンジニアとして重要な役割を果たす職種ですが、それぞれの激務度合いには違いがあります。

設計職

プラントの設計図や仕様書を作成する役割を担い、細部にわたる計算や評価を必要とします。
設計プロセスでは厳密な規格や法令に則り、安全性や効率性を考慮しながら設計を進める必要があります。設計職はデスクワークが主であり、綿密な計画や文書作業が求められます。

特定分野が忙しいということはありませんが、設計が終わらないと後工程の調達業務などが全て滞ってしまうため正確に、しかし早く業務を完了する必要に迫られます。
顧客要望を受けたり現場での施工性を考えながら何度も計算や図面修正を行うため、特に設計初期フェーズは残業が多くなりがちです。
また試運転などでうまくいかないとプロセス設計者として問題解決まで現場貼り付けになることもあります。

平時の平均残業時間は20~40時間程度ですが、多い時は残業100時間超えもあるでしょう。
このあたりはIT業界で有名なデスマーチのほうが残業時間多いと思われます。

施工管理職

施工管理はプロジェクトの実施や施工現場の監督を担当し、進捗管理や品質管理、予算管理など多岐にわたる業務を行います。施工管理は現場での指導や調整が中心であり、時には予期せぬトラブルへの対応も求められます。

大手企業では土日休みとする目標をたてていますが、現状は隔週での土日休みが多いようです。
それでも繁忙期となれば毎週土曜出勤、何かしらのトラブルで納期厳守が危ない時は人員増員して24時間3交代で現場工事を回すこともあります。

土木工事や建屋工事は進捗が天候に左右されるため、遅れた場合は配管工事や電気工事など後工程で挽回する必要もあり、各工事担当者が遅れを取り戻すため残業多くなりがちです。

平均残業時間は50~80時間(土曜出勤ある場合)ほどですが、プラントを全部停止して行うシャットダウンメンテナンス(SDM。定期修繕)では100時間超えも珍しくないです。

管理人は1番ひどかった現場で残業が300時間を連続で超えたことがあります。心身ともに限界までいきました。

激務であることのメリット、デメリット

激務というと敬遠されがちですがメリットとデメリット両方が存在します。

激務であることのメリット

成長の機会

激務な環境で多岐にわたる業務に取り組むことで幅広い知識やスキル、業務処理能力を身につけることができます。慣れてくると無理難題が複数同時に押し寄せてきても冷静に優先順位を決め処理できるほどの人材になります。

問題解決能力の磨き

プラントエンジニアは日常的にトラブルや課題に直面します。その中で迅速かつ効果的な解決策を見つける能力を養うことができます。問題解決力は他の職業や日常生活においても大いに役立つスキルです。

高い給料

求められる業務が多かったり残業が多い分、年収は高めになります。
残業代だけで月に十数万円以上つくこともありますし、海外勤務の場合は手当等合わせて月収が2倍以上になることも珍しくありません。
下記記事にはプラントエンジニアの平均年収を載せていますので、よろしければご覧になってください。

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激務であることのデメリット

健康への影響

長時間労働やストレスの多い環境により、プラントエンジニアの身体や精神の健康に影響を及ぼす可能性があります。適切な体調管理や息抜きが重要となります。

ワークライフバランスの課題

激務な環境ではプライベート時間の確保が難しく、家族や趣味などの大切な時間を確保することが困難になる場合があります。

高い負荷とプレッシャー

業務の多忙さや締切のプレッシャーが常に存在します。時には緊急事態やストレスフルな状況に直面することもあり、心身の疲労や強いストレスを引き起こす可能性があります。

激務に悩んだ時の対処法

優先順位の設定と時間管理

業務の重要度や緊急度に基づいてタスクを優先順位付けしましょう。重要な業務に集中し、時間を最大限に活用することが重要です。それとあわせスケジュール管理やタイムマネジメントのスキルを磨きましょう。予定を立て時間を効果的に使うことで、業務の効率を向上させることができます。

人に仕事を任せる(デリゲーション、権限譲渡)

必要な場合には人に仕事を頼んだり、チームメンバーへのデリゲーションを行いましょう。プラントエンジニアの仕事はチームで行うため、あなた一人ですべてこなす必要はありません。
逆にあなた一人で業務を抱え込んでしまうと、あなたの仕事が終わらなければ他の人が業務を進めることができません。業務の負荷を分散することで効果的なチームワークを実現できます。

コミュニケーション頻度を高める

プラントエンジニアの仕事はチームでの作業が多いため、他メンバーや関係者とのコミュニケーションを円滑に行うことが重要です。適切な情報共有や連携を行うことで業務のミスや重複を防ぎ、後戻り作業を防ぐ効率的な作業が可能となります。遠回りに見えますが、結果的に労働時間の短縮に繋がります。

適度に息抜きする

激務による長時間労働はストレスや疲労を引き起こし、生産性や健康に悪影響を与える可能性があります。体調を崩して数日休む必要が出てくると、休み明けにまた大量の業務が振ってくることになります。自身の健康管理に注意を払い適度に休息して働く方が、働き続けるよりも時間効率が良くなることが多いです。

激務になった場合の体調管理方法

十分な睡眠

十分な睡眠をとることで脳の機能が回復し、集中力や判断力が向上します。睡眠不足の状態では情報処理や問題解決能力が低下し、ミスやミスジャッジのリスクが高まります。これはプラントエンジニアにとって非常に危険な状態です。

また睡眠には肉体疲労やストレス負荷の影響を軽減し、心身のリラックス状態を促す効果もあります。また激務の中で疲労が蓄積すると免疫力が低下し病気にかかりやすくなるため、睡眠を優先することは健康維持にもつながります。

適切な栄養摂取

激務の中で適切な栄養摂取をすることは体力や免疫力の維持に重要です。長時間労働やストレスにより栄養不足になるリスクが高まるため、バランスの取れた食事を心がけましょう。
以下に摂取をおすすめする栄養素とその重要性をいくつか紹介します。

炭水化物

炭水化物はエネルギー源として最重要です。激務の中では長時間の集中や身体的な活動が求められるため、十分なエネルギーを確保する必要があります。
穀物、パン、米、麺類、野菜(穀類)などから炭水化物を摂取することができます。

タンパク質

タンパク質は体の組織や細胞の修復や再生に欠かせない栄養素です。激務の中では筋肉の疲労や損傷が起こりやすく、適切なタンパク質摂取によって回復を促すことが重要です。
肉、魚、大豆製品、卵、乳製品などの食品からタンパク質を摂取しましょう。
食材からの摂取が難しい場合はプロテインパウターやプロテイン菓子がおすすめです。

脂質

脂質もエネルギー源として必要ですが、適切な種類と量を摂取することが重要です。健康な脂質としては、オメガ-3脂肪酸を含む魚やナッツ、種実類が挙げられます。
悪玉コレステロールを含む飽和脂肪酸やトランス脂肪酸は避けたほうがいいです。

ビタミンとミネラル

ビタミンとミネラルは体の代謝や免疫機能の維持に重要です。特にストレスによって消耗されやすいビタミンCやビタミンB群、ミネラルの亜鉛やマグネシウムの摂取が推奨されます。
新鮮な果物、野菜、穀物、肉、魚などからバラエティ豊かに摂取しましょう。
食材からの摂取が難しい場合は医薬品やサプリメントの活用がおすすめです。

まとめ

  • プラントエンジニアが激務と思われる理由は、納期厳守が求められ常に時間に追われる働き方であるためです。また膨大な業務量に直面し多くのタスクを同時にこなさなければならないことも激務と思われる要因になっています
  • 設計職はデスクワークが主で綿密な計画や文書作業が求められ、施工管理職は現場での指導や調整が中心であり、予期せぬトラブルへの対応も求められます。
  • 激務であることのメリットとしては成長の機会や問題解決能力の磨き、高い給料が挙げられます。デメリットとしては健康への影響やワークライフバランスの課題です。

プラントエンジニアの仕事は非常に専門的であり、激務と思われる理由も多くあります。
ただし激務にはメリットもあり、成長の機会や高い給料といった面も存在します。
プラントエンジニアに限らずどの業界も大変な側面はありますので、自身のやりたいこと、やれることの適性を見極めながら仕事を選び楽しんでいきましょう。

ABOUT ME
Naruhashi
Naruhashi
設計エンジニア
大学では化学工学を学び、プラントエンジニアとして10年以上のキャリアがあります。プラントエンジ、事業会社、メーカーエンジと、様々な立場で実務を行った経験を活かし、プロジェクトが滞り無く進む仕事の組み立てを心がけています。携わる案件は、数万円のものから数百億円のものまで、千差万別です。
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