プラントエンジニアとは?仕事内容や必要スキル、キャリア等を解説

naruhashi
この記事を読んで分かること
  • プラントエンジニアとは
  • 仕事の流れと内容
  • 必要スキル
  • キャリア
  • 業界の展望

本サイトに来られる方の多くは、すでにプラントエンジニアとしてキャリアがある方が多いと思います。しかし中には未経験でプラント業界に入るか悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。

本記事では、プラントエンジニアの仕事内容や必要スキル、キャリアプラン、業界の将来性について解説します。

プラントエンジニアの日常業務や役割を知ることで、プラントエンジニアという職業に興味を持っていただけると嬉しいです。

プラントエンジニアとは工場を造る仕事

プラントエンジニアとは、複数機器で構成されたプラントと呼ばれる工場を造る仕事です。
製造工場のプロセスや設備の設計、調達、据付、運用、保全修理など、各分野を担当する専門家が協力して業務を行います。以下、プラント例と職種例を示します。

みなさんが日常で使う製品も、プラントで作られたものが多いです。

プラント例
  • 石油化学プラント:石油精製、エチレン、ポリマー、ゴム、合成繊維製造など。
  • 発電プラント:火力(LNG、石炭、石油)、水力、原子力、風力、太陽光など。
  • 化学プラント:有機化学、特殊化学品、肥料、農薬、塗料、洗剤製造など。
  • 食品・飲料プラント:食品加工、冷凍、製菓、醸造所、飲料製造工場など。
  • 医薬プラント:原薬合成、中間材、製剤製造、包装など。
  • 鉄鋼プラント:高炉、製鉄所、鋼材製造、圧延など。
  • 化粧品プラント:原料調合、製造、充填、包装など。
  • 水処理プラント:浄水、殺菌、軟水化、汚泥処理、塩水処理など。
  • 紙・パルププラント:パルプ化、製紙プロセス、加工、製品など。
職種例
  • 営業、設計技術者、施工管理、メンテナンスサポートなど。
  • 分野はプロセス、機械、電気、計装、配管、空調、土木、建築など。

一般の方にはあまり馴染みがありませんが、プラントエンジニアは産業界のバックボーンとして製品やエネルギーの生産を円滑に行うために欠かせません。

仕事の流れ:受注から保全まで

プラント業界の仕事の流れは下記のようになります。

考えることはいっぱいあるけど、チームで協力して頑張ります。

営業

顧客の直接依頼、または顧客からニーズを拾い見積もりに必要な情報を集めます。
場合によっては顧客と一緒に仕様書を作成する所から入ります。
営業職であったとしても技術的な話がある程度できる必要があるため、他業種から転職する場合は多くの勉強が必要となります。

FS(Feasibility Study):事業可能性の検討

FSではプラントの目的や要件を明確に定義します。
建設目的は何か、どのような機能が必要か、採算が取れそうか、資金調達はどのように行うのか、技術的に可能か、法規制や環境規制に適合しているかなど、案件の実施判断に必要な概略設計を行っていきます。

概略設計とはいえ方向性を見誤ると後々大きな問題となりますので、プラントの技術的、金銭的な成功を左右する重要なフェースです。

FEED (Front End Engineering Design):基本設計

FSで決まった情報をもとに技術的課題の抽出やコスト概算を行います。
FEEDを元に後の設計が進みますので、コスト的にも非常に重要な部分になります。

実務としてProcess Flow Diagram(PFD)の作成、物質収支(Material Balance)の計算、装置や使用材料の選定、安全対策、コスト評価などが行われます。

見積もり・提案

FSで決まった仕様をもとに、必要となる設備費用や納期を算出します。
協力会社から実際に見積もりを取りながら、数字の精度を高めていきます。
顧客要望に対応できないものがある場合、必ずDeviation list(デビエーションリスト)を作成し添付するようにしましょう。

設計

案件の受注が決まったら本格的に設計業務に移ります。
Piping & Instrumentation Diagram(P&ID)を作成したり、パイプラインのルート設計や電気・計装のシーケンス設計など、具体的な項目を仕上げていきます。

設計は各分野(土木、建築、機器、配管、空調、電気、計装など)に分かれ、成果物として図面や計算書を含む各種仕様書が出来上がります。

調達

設計が完了したものから自社内もしくは外注先で材料調達や機器製作をかけていきます。
大きなプロジェクトや会社では調達専門の部署が対応します。
見積もり時の金額と納期から大きくずれないよう、材質や工法を設計部門が一緒に考えながら進めることもあります。

建設

プラントを実際に現場で作り上げていきます。
新設の場合は土木工事から始まり、基礎工事、建屋工事、機器設置工事、配管工事、電気工事、計装工事など、各専門会社がエリア毎に施工していきます。

各社工事に支障がでないよう、昼過ぎに行われるミーティングなどで次の日の機器搬入ルートや時間、通行止め情報を共有し、各社の作業を調整します。

試運転

各種工事が完了したら機器動作や接続に問題が無いか試運転を行います。
試運転は大きく2段階に分けられます。

  • Pre-Commissioning
    Mechanical Completionという場合もあります。基本は機器単体で仕様どおりに製作できているか、据付けができているかなど非運転状態で確認します。
    また運転に必要な各種ユーティリティーの補充や受電、配管洗浄、総合気密試験なども行います。
  • Comissioning
    目的通りの質・量・時間で生産できるか全体を通して稼働させます。
    この時に色々と生産条件を振るので、製造運転時よりも多くの経験を積むことができます。
運用・保守点検

昔は試運転が完了して引き渡しで終わりでしたが、運用や保守点検まで見積もりに含める会社も増えてきました。よくOperation&Maintenance(O&M)と言われています。

仕様通りにものができていても、経年劣化による不具合や想定外のことが起こりますので、
保守点検も設計と同じくらい重要です。
設計期間よりも運用期間の方が何倍も長くなることを覚えておきましょう。

必要スキル:技術だけでは物足りない

技術的なことだけ学んでいると仕事をうまくこなすのは大変です。

技術的知識と理解力

機械や設備に関する技術的な知識を持つことが重要で、製造工程や設備の仕組み、制御システムなどへの理解が求められます
一方で各分野の専門家がチームを組み仕事を進めるため、全分野の知識が無ければいけないというわけではありません。
ただし他分野の知識も知っていると前後工程のことを考えて仕事を組み立てられるため、トラブルが起こる確率を減らすことができます。
あなたが未経験者であるならば、化学工学、機械工学、電気工学、土木工学などの基礎知識を学ぶことでプラントエンジニアとしてのスタートラインを切ることができます。

問題解決能力

設計時から運転・メンテナンス時含め、日常的に発生するトラブルに対処する必要があります。トラブル内容から逆算して原因がどこにあるかを迅速に特定できなければ、設計納期に間に合わなかったり製造が止まり会社に損害を与えてことになるでしょう。
適切な対策を講じるためには、論理的思考やトラブルシューティングのスキル求められます。

コミュニケーション能力

プラントエンジニアの仕事はチームを組んで行うため、製造現場や他チームメンバーとのコミュニケーションが頻繁に発生します。また顧客要望を汲み取る能力も求められます。
コミュニケーションを十分取れていないと情報に齟齬が生じて設計ミスが発生したり、予定通り工事ができないといったトラブルが発生してしまいます。
仕事の円滑な進行の鍵となるため、適切な情報共有や協力関係の構築が求められます。

実践的なスキル

実際の現場では各種設備の点検、保守、修理を行いますので、設計側の人間ならば現場作業のことを考えて仕様やレイアウトを検討しなければなりません。実践的なスキルの習得には実務経験が必要となってきます。
実際の設計業務、機械加工、電気配線、制御システムの設定などを通して実践的なスキルを習得していきます。

安全意識

プラントエンジニアは安全性を最優先に考えなければなりません。

製造現場では危険な状況や化学物質の取り扱いがあります。
設計時にはリスクアセスメントを行い危険項目の洗い出しは行い、対策を仕様に反映します。
しかしコスト等の問題で設計側だけですべて対応するのは現実的でない項目もあるため、作業中の保護具着用や作業手順の遵守などを徹底し対策とする場合もあります。
安全な環境を維持するためにも、法令や規制に則った設計、行動を忘れないようにしましょう。

キャリア:管理職と専門家の道

プラントエンジニアのキャリアは大きく分けて4つあります。

  • 技術専門家
  • マネージャー
  • 発注者側への転向
  • コンサルタントへの転向

仕事に慣れてきたら自分が将来どうなりたいか思い描くのもいいかもしれません。

技術専門家

特定の技術領域で専門知識とスキルを磨きながら、高度な技術的課題に取り組むキャリアです。
現場での実践的な経験を通じて、問題解決能力や技術的な洞察力を養っているため、業界や企業のイノベーションに貢献します。
一方で過剰な専門化リスクがあり、幅広い知識やスキルの獲得は難しくなる可能性もあるため、専門分野以外にも積極的に目を向ける必要があります。

マネージャー

プロジェクトやチームのリーダーとして、成功やチームの成果を管理・指導するキャリアです。
メンバーの育成、タスクの割り当て、進捗管理、パフォーマンス評価などを通じて優れたちーだーシップを磨いていきます。
マネージャーとしての責任が増えると技術的な業務に関与する時間が減少してしまい、専門知識の維持や深化に取り組む余裕が減る可能性があります。

発注者側への転向

プラントエンジニアから、プロジェクトやプラントの発注者側へ転向するキャリアです。
仕様や要件を定義し契約交渉なども行いますが、プラントエンジニア側で同様の業務を行っている場合が多いです。
プラントをどのように運営していくかという視点で業務を進めていく必要があるため、技術面の専門知識をより深くしたい場合は自己研鑽で補っていく形になります。

コンサルタントへの転向

技術的な知識や経験を活かしてコンサルタントとして付加価値を提供するキャリアです。
問題解決能力を養うために、実務での問題に取り組み、解決策を提案し実装します。
幅広い経験を積むことで、知識とスキルの幅を広げることができるでしょう。
しかしコンサルタントは成果物に対して高い品質と厳しい期限が要求されるため、情報処理能力やプレゼンテーション技術、高いストレス耐性が求められます。

業界展望:国内か海外か

国内の仕事もやりがいはあるけれど、大規模プラントに携わりたいなら海外を目指そう!

国内市場

まず新設の大型プラントはかなり少ないと思われます。
大型プラントの場合、輸送を考えると船便が使える海岸沿いに建設されますが、既に有効な場所は埋まっています。
また現在設計しているプラントを建設できる敷地面積ギリギリあればいいということはなく、将来のプラント拡張性を見込んで敷地面積は多めに取得する場合がほとんどのため、条件良くかつ大きな敷地面積がある場所となるとまず見つかりません。

世情的には再生可能エネルギーのシェア上昇の流れに従い、太陽光や風力などの発電プラント需要が拡大していますが、これも建設用地に適した場所で残っている箇所は大分少なくなってきており、場所を確保したとしても環境アセスメントで頓挫するパターンもあるため今後も活況が続くかは不明です。

実需としては老朽化したプラントのリプレースや、プラント運転員の高齢化・人口減少に伴う運転自動化対応などがますます増えると予想されます。
プラントエンジニアは、最新の技術を取り入れながら、高度な自動化プラントの設計や運営に関わることが期待されます。
既存プロセスを正確に理解し、且つ限られた予算やスペースで顧客要求を満たさなければならないため、新設プラント以上に難しい案件も多いです。
ですがもし国内メインで仕事を行っていきたい場合、プラントの維持改修やメンテナンスに関する知識を身につけることをおすすめします。
これは新設プラントでも現場目線で設計するために必要なことですので、損をすることはありません。

海外市場

世界的なエネルギー需要の増加や新興国の経済成長と密接に関連しています。

まず、新興国では工業化が進み、エネルギー需要が急速に増加しています。
特にアジア地域では人口の増加や都市化の加速が見られており、これに伴い大規模な発電プラントや化学プラントの建設や運営が求められています。

人口増加に伴う都市化はインフラ整備や生活環境の改善を必要としており、水処理施設、上下水道、廃棄物処理施設などのプラント需要も増えています
また、交通インフラや建築物のエネルギー効率化も重要な課題となっており、先進国ほどではなくとも環境配慮型の設計が求められる場合があります。
これらのプラントの設計や建設、運営には、高度な技術やノウハウを持ったプラントエンジニアの存在が欠かせません。

大手エンジニア会社の海外売上高比率が高いのは、新設かつ大規模プラントを継続的に海外で受注しているためです。これは過去実績を重ねてきた成果が今に繋がっています。
大手でなくとも取引先やグループ会社都合で海外出張・駐在となることも多いです。

プラントエンジニアが勤める会社にとって、儲かる案件は海外が多い構造は今後も変わらないと思います。
技術的な話ができれば海外のエンジニアと意思疎通できることもありますが、仕事だけ行っていても案件がうまく進むとは限りません。英語で問題なく雑談をできるよう勉強したり、現地習慣を勉強しておくことも大切です。

まとめ

プラントエンジニアという職種に対して、仕事の流れと内容、必要スキル、キャリア、業界の展望を説明をさせていただきました。

プラントエンジニアはチームで仕事を行い、大規模プラントでは各フェーズの専門家が協力してプロジェクトを成功に導きます。
仕事を成功させるためには技術力だけでなく、問題解決能力やコミュニティ能力など様々な要素が求められます。

未経験者の方にはプラントエンジニアの働き方を知っていただき、経験者の方には改めて職種に対する自分の思いを見直すきっかけになればと思います。

一緒にプラント業界で頑張っていきましょう!

ABOUT ME
Naruhashi
Naruhashi
設計エンジニア
大学では化学工学を学び、プラントエンジニアとして10年以上のキャリアがあります。プラントエンジ、事業会社、メーカーエンジと、様々な立場で実務を行った経験を活かし、プロジェクトが滞り無く進む仕事の組み立てを心がけています。携わる案件は、数万円のものから数百億円のものまで、千差万別です。
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